あれは開塾して間もない頃の話です。
中学2年の男の子が社会のワークを持ってきました。範囲は江戸時代。ページを開かせて、「じゃあこのページやってみようか」と言ったら、ペンが全く動かない。
30問あるうち、書けたのは1問だけでした。「徳川家康」。
まあ、そうだろうなと思いました。学校の授業を聞いていなかったんだろうし、家で復習もしていない。30問中1問は、むしろ正直な数字です。
「答えを見ていいよ」から始める
普通なら「じゃあ覚えよう」と言って暗記させるところですが、30問中1問の生徒にとって「29問覚えろ」は絶望的です。やる気以前の問題で、量に圧倒されてしまう。
そこで、こう言いました。
「10秒考えてわからなかったら、すぐ答え見ていい。悩まなくていいから、とにかく全部埋めてみて」
答えを写しているだけなので、勉強としては意味がないように見えるかもしれません。でもこの段階で大事なのは「全部の空欄が埋まった状態を作る」ことです。
全部埋まったら、5分だけ覚える時間を取りました。5分。たった5分です。
2回目で何が起こったか
5分経って、同じページをもう一度。今度はノーヒント。
結果、30問中20問正解。
30問中「徳川家康」の1問だけ → 5分後に20問正解
その子の顔が忘れられません。自分の解答用紙を見て、ぱっと顔が明るくなった。「え、俵20問もできた」って。
冷静に考えれば当たり前のことです。さっき答えを見て、5分間覚えて、すぐに同じ問題をやったんだから。でもその「当然の成功」が、この子には初めての体験だった。この1回が、その後の学習態度をガラッと変えました。
リピート勉強法という名前をつけた
この経験から生まれたのが、リピート勉強法です。
- ワークから1ページだけ選ぶ
- 1回目を解く(10秒考えてわからなければ答えを見る)→ 自力で解けた数をメモ
- 5分間の暗記タイム(音読でも書き取りでも自由)
- 2回目をノーヒントで解く → 1回目のメモと比較
ほぼ確実に正答数が伸びています。この「伸び」を目で見ることが、この方法のいちばんの目的です。
なぜたった2回で効くのか
理屈は単純です。覚えてから確認するまでの間隔が短いから、記憶が残りやすい。5分前に見た答えは5日前に見た答えより覚えている。当然です。
もう一つ、範囲を1ページに絞っているから心理的な負担が軽い。「ワーク全部やらなきゃ」と思うと手が出ないけれど、1ページだけなら始められる。そして1ページで成功すると、「もう1ページやろうかな」となる。この連鎖が大きい。
使える科目と使えない科目
- 効く:社会(地理・歴史・公民)、理科(生物・地学)、英単語、漢字
- 向かない:数学の計算、国語の読解
「理解する」系と「覚える」系の勉強は別物で、リピート勉強法は後者専用です。
定期テスト前の使い方
テスト2週間前から、このペースで回せます。
- 最初の1週間:テスト範囲を1日2ページずつリピート
- 次の3日間:1回目の正答率が低かったページを再リピート
- 残り4日間:範囲全体を通しで解いて仕上げ
「暗記が苦手」という生徒の多くは、暗記の才能がないのではなく、正しいやり方を知らないだけです。1ページ、2回。まずはそこから。
清水 雅則(シロヤギ塾 塾長)