面談で保護者の方とお話しすると、ほぼ毎回出てくる話題があります。

「うちの子、全然勉強しないんです」

お気持ちはよくわかります。ただ、8年間この仕事をしてきて一つだけ言えることがあるとすれば、「がんばれ」と言ってやる気が出た生徒を、私は一人も見たことがありません。

じゃあどうするか。私なりにたどり着いた答えを書きます。

やる気のある子の共通点は「能力」じゃない

これまで何十人もの生徒を見てきましたが、やる気のある子にはある共通点があります。勉強が好きなわけでも、地頭がいいわけでもない。

「自分は伸びている」と感じられている子です。

逆に言えば、伸びている実感がなければ、やる気は出ません。当たり前のことなんですが、ここを見落としているケースがすごく多い。

たとえば、毎回80点を取っている子がいるとします。客観的には優秀です。でも本人にとっては「また80点」でしかない。前回より上がっていなければ、成長の実感がないんです。

小さな変化を「見える化」する

うちの塾でやっていることの一つに、計算プリントのタイム計測があります。同じ20問のプリントを週に1回やらせて、タイムを記録する。それだけです。

実際の変化

  • 計算プリント:先週3分40秒 → 今週3分12秒(「先生、縮まった!」)
  • 漢字テスト:前回6問正解 → 今回8問正解

たったこれだけの差でも、数字で見せると子どもは自分の成長を信じられるようになります。

ここで絶対にやってはいけないのが、他の子と比べること。比較対象は、あくまで過去の本人です。

「勉強=怒られる時間」になっていませんか

勉強を教えていて、お子さんが解けないとイライラする。「何回やったら覚えるの」と声を荒げてしまう。ありませんか。

子どもの頭の中では、こういう回路ができます。

  1. 勉強する
  2. 間違える
  3. 怒られる
  4. つらい → 机に向かいたくなくなる

こうなると、勉強の内容が嫌なんじゃなくて、行為そのものが「つらいもの」に変わる。ここから巻き返すのはかなり大変です。

解けなかったことを責めるのではなく、机に向かったこと自体を認めてあげてほしい。

答えじゃなくて「考えた道筋」を聞く

うちの塾では、正解した問題でもすぐ丸はつけません。「それ、どうやって解いた?」と聞きます。

なぜかというと、勘で当たっていることがあるからです。選択肢を2つに絞って「なんとなくこっち」で合ってしまったような正解は、テスト本番では再現できません。

でもこの「どうやって解いた?」という問いかけには、もう一つ大事な意味があります。

子どもにとって、自分の考えを聞いてもらえる経験はすごく大きい。特に学校では、手を挙げて発言する子が一部に限られますから、自分の考えをちゃんと聞いてもらったことがない子が意外と多いんです。

「あ、自分の考え方を聞いてくれるんだ」。この感覚が自己肯定感につながって、じわじわとやる気に変わっていきます。

ご家庭で今日からできること

お子さんが宿題をやっているときに、答えが合っているかどうかよりも「どうやって考えた?」と聞いてみてください。最初は「わかんない」とか「なんとなく」と言われると思います。でも続けていると、ちゃんと言葉にしようとし始めます。その変化が見えたら、大きな一歩です。

結局、やる気の正体は「自信」

8年やってきて思うのは、やる気が出ない子のほとんどは怠けているわけじゃないということです。「どうせ自分はできない」と思い込んでいるだけ。

地味なことばかりですが、これを続けた先に、ふっと変わる瞬間が来ます。その瞬間に立ち会えるのが、この仕事のいちばんの喜びです。